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行政機関の人事・労務担当者必見!Excelの絶対参照活用術 | ユースフル

はじめに:行政機関の人事・労務担当者がExcelの絶対参照を習得する重要性

行政機関の人事・労務担当者の皆さん、こんなお悩みはありませんか?

  • 複雑な給与体系(一般職、技能職、管理職など)の給与計算で、基本給や各種手当の参照が毎回ずれてしまう
  • 人事評価シートを作成する際、評価基準や係数が部署ごとに変わってしまい、公平性の確保が難しい
  • 年度ごとの人員配置計画を立てる時、定員や予算枠が正しく反映されず、調整に時間がかかる

これらの問題は、Excelの「絶対参照」という機能を使いこなすことで解決できます。本記事では、行政機関特有の事例を交えながら、絶対参照の基本から応用まで、分かりやすく解説していきます。

絶対参照とは?行政機関の人事・労務業務で活用するコツ

絶対参照とは、Excelでセルを参照する際に、そのセルの位置を固定する方法です。通常、セルを参照する際は相対参照が使用され、数式をコピーすると参照先も相対的に移動します。しかし、絶対参照を使用すると、数式をコピーしても参照先が変わりません。

行政機関の人事・労務業務では、以下のような場面で絶対参照が特に有用です:

  • 給与計算:職級ごとの基本給や各種手当の金額を固定参照する
  • 人事評価:評価基準や係数を固定参照し、公平性を確保する
  • 人員配置計画:部署ごとの定員や予算枠を固定参照する

絶対参照の使い方:ステップバイステップガイド

絶対参照を使用するには、セル参照の前に$記号を付けます。以下の3つのパターンがあります:

  1. 完全な絶対参照:$A$1(列も行も固定)
  2. 列の絶対参照:$A1(列のみ固定)
  3. 行の絶対参照:A$1(行のみ固定)

実際の使用手順は以下の通りです:

  1. 参照したいセルを選択します
  2. 数式バーでセル参照の前に$を入力します
  3. または、セル参照を選択した状態でF4キーを押すと、絶対参照と相対参照を切り替えられます

行政機関の人事・労務業務における絶対参照の活用事例

事例1:複雑な給与体系に対応した給与計算

市役所Aの人事課で、一般職、技能職、管理職の給与を一括計算する場合を考えてみましょう。基本給や各種手当は職級ごとに固定額ですが、超過勤務時間は個人ごとに異なります。

手順:

  1. A1:C1セルに各職級の基本給(例:一般職30万円、技能職28万円、管理職40万円)を入力します
  2. D1:F1セルに各職級の超過勤務手当単価を入力します
  3. G2セルに「=VLOOKUP(B2,$A$1:$C$1,3,FALSE)+VLOOKUP(B2,$D$1:$F$1,3,FALSE)*C2」という数式を入力します(B2は職級、C2は超過勤務時間)
  4. この数式を他の行にコピーすると、基本給と手当単価は固定されたまま、各職員の職級と超過勤務時間に応じて給与が計算されます

事例2:公平性を確保した人事評価シートの作成

県庁Bの人事評価室で、全部署共通の人事評価シートを作成する場合を考えてみましょう。評価項目ごとの重要度は固定ですが、個人の評価点は異なります。

手順:

  1. A1:E1セルに各評価項目(業務遂行能力、協調性、創造性、責任感、専門性)の重要度(3、2、2、2、1)を入力します
  2. B2セルに「=B2*$B$1」という数式を入力します(B2は評価点)
  3. この数式をC2:F2にコピーし、さらに下の行にもコピーします
  4. G2セルに「=SUM(B2:F2)/SUM($B$1:$F$1)」という数式を入力し、総合評価を計算します

よくある間違いと注意点

絶対参照を使用する際、以下のような間違いに注意しましょう:

  • $記号の付け忘れ:特に列と行の両方を固定したい場合、$A$1のように両方に$を付けることを忘れないようにしましょう。
  • 不要な絶対参照の使用:すべてのセル参照を絶対参照にする必要はありません。必要な部分だけを固定することで、柔軟性を保ちつつ、効率的な数式を作成できます。
  • コピー&ペースト時の注意:絶対参照を含む数式をコピー&ペーストする際、意図しない結果になることがあります。必ず結果を確認しましょう。

これらの間違いにより、以下のような問題が発生する可能性があります:

  • 給与計算の誤り:基本給や手当が職員ごとに変わってしまい、不適切な支給が発生する
  • 人事評価の不公平:評価基準が部署や個人ごとに変化してしまい、公平性が損なわれる
  • 人員配置計画の混乱:定員や予算枠が正しく反映されず、行政サービスの質の低下につながる

練習問題:行政機関の人事・労務シーンで学ぶ絶対参照

以下の練習問題で、絶対参照の理解を深めましょう。

問題1:職員の通勤手当計算

問題:市役所Cの総務課で、職員の通勤手当を計算するシートを作成しています。A1:C1セルに距離区分(2km未満、2km以上5km未満、5km以上)、A2:C2セルにそれぞれの手当額(4,200円、7,100円、12,900円)が入力されています。D2:D10セルに各職員の通勤距離が入力されています。E2セルから始まる通勤手当の計算式を作成し、他の職員にも適用できるようにしてください。

回答

E2セルに以下の数式を入力します:
=VLOOKUP(D2,{0,$A$2;2,$B$2;5,$C$2},2,TRUE)

この数式をE3:E10にコピーすることで、各職員の通勤手当が正しく計算されます。

解説

この問題では、手当額(A2:C2)を絶対参照にすることがポイントです。VLOOKUP関数と配列定数を組み合わせることで、距離に応じた手当額を柔軟に参照できます。TRUE を指定することで、範囲内での検索が可能になります。絶対参照を使用することで、数式をコピーしても正しい手当額が参照されます。

問題2:部署別予算配分

問題:県庁Dの財務課で、来年度の部署別予算を配分しています。A1セルに総予算(10億円)、B1:E1セルに各部署(総務、福祉、環境、教育)の職員数比率(0.2、0.3、0.2、0.3)が入力されています。A2:A5セルに各費目(人件費、事業費、施設費、その他)の予算比率(0.6、0.2、0.1、0.1)が入力されています。B2セルから始まる予算配分の計算式を作成し、すべての部署と費目に適用できるようにしてください。

回答

B2セルに以下の数式を入力します:
=$A$1 * B$1 * $A2

この数式をB2:E5にコピーすることで、各部署・各費目の予算が正しく計算されます。

解説

この問題では、総予算(A1)を完全な絶対参照、部署の職員数比率(B1:E1)を行の絶対参照、費目の予算比率(A2:A5)を列の絶対参照にすることがポイントです。これにより、数式をコピーしても、総予算は固定され、適切な部署と費目の比率が参照されます。この方法で、20のセルすべてに正確な予算配分額が計算されます。

問題3:人事評価の総合点算出

問題:市役所Eの人事課で、職員の人事評価の総合点を算出するシートを作成しています。A1:E1セルに評価項目(業務遂行、態度、成果、能力開発、特記事項)の重要度(0.3、0.2、0.3、0.1、0.1)が入力されています。A2:E6セルに5名の職員の各項目の評価点(1-5)が入力されています。F2セルから始まる総合点の計算式を作成し、他の職員にも適用できるようにしてください。また、G2セルには評価点に基づくランク(4.5以上:S、4.0以上:A、3.5以上:B、3.0以上:C、3.0未満:D)を表示する数式を作成してください。

回答

F2セルに以下の数式を入力します(総合点計算):
=SUMPRODUCT(A2:E2,$A$1:$E$1)

G2セルに以下の数式を入力します(ランク評価):
=VLOOKUP(F2,{0,"D";3,"C";3.5,"B";4,"A";4.5,"S"},2,TRUE)

これらの数式をF3:G6にコピーすることで、各職員の総合点とランクが正しく計算されます。

解説

総合点計算では、評価項目の重要度(A1

解説

総合点計算では、評価項目の重要度(A1:E1)を絶対参照にすることが重要です。SUMPRODUCT関数を使用することで、各項目の評価点と重要度を掛け合わせた合計を計算しています。絶対参照を使用することで、複数の職員に対して同じ基準で評価を行うことができます。

ランク評価では、VLOOKUP関数と配列定数を組み合わせて使用しています。この方法により、総合点に基づいて適切なランクを自動的に割り当てることができます。TRUEを指定することで、範囲内での検索が可能になります。

両方の数式で絶対参照を適切に使用することで、公平で一貫性のある人事評価システムを構築できます。これは、行政機関における透明性と公平性の確保に貢献します。


まとめ:行政機関の人事・労務業務を効率化する絶対参照の威力

Excelの絶対参照は、行政機関の人事・労務業務において非常に強力なツールです。本記事で学んだ内容を活用することで、以下のような業務改善が期待できます:

  • 複雑な給与体系に対応した、正確で効率的な給与計算の実現
  • 公平性と透明性を確保した人事評価システムの構築
  • 部署間の調整や定員管理を考慮した、精度の高い人員配置計画と予算管理
  • 行政特有の複雑な規則や基準に基づいた、柔軟で正確なデータ管理

絶対参照の基本を理解し、日々の業務で積極的に活用することで、あなたのExcelスキルは確実に向上します。そして、それは行政機関の人事・労務部門における、より戦略的で効果的な意思決定につながるでしょう。最終的には、行政サービスの質の向上と、市民満足度の向上に寄与することができます。

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長内 孝平|Osanai Kohei
長内 孝平|Osanai Kohei
ユースフル㈱代表取締役。神戸大学経営学部卒。伊藤忠商事株式会社にて経理・税務を担当。日本人初「教育系YouTuber」としてMicrosoft MVP Awardを4年連続受賞中。シリーズ累計15万部突破のベストセラー書籍『できるYouTube式 Excel 現場の教科書』著者。

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